日本三大急登に挑む! 雪の黒戸尾根: 甲斐駒ヶ岳その3
2023年3月6日(月)~7日(火) 山梨県北斗市 甲斐駒ヶ岳(標高2967m) 小屋泊単独行
7日の朝は4時過ぎに起床しました。予定では5時に出発し、8時過ぎに登頂。七丈小屋には10時30分頃戻り、11時には出発して、16時30分頃下山完了となるはずでした。しかし、せっかく早く起きたのにもかかわらず、お湯を沸かしたり、朝食を食べたり、着替えて荷物をまとめたりしているうちにいつの間にか5時を過ぎてしまいました。それでも、15分程度の遅れなら問題ないと思っていたら、出発直前になって急にもよおしてしまい、トイレにいったりしているうちに、なんと6時を回ってしまいました。

ちなみに、朝食はカップ麺で簡単に済ませました。
6:11 いったいどうしてこんなに時間が経ってしまったのかと、意味もなく憤りながら第2小屋の前のベンチでクランポンを装着し、ようやく出発の準備が整いました。

鳳凰三山の向こうの空が赤く染まり、日の出が近づいています。まだ暗いうちに歩きはじめるつもりでヘッドライトをヘルメットに装着しておいたというのに、すでに明るくなってヘッドライトは必要なくなっていました。できれば剣が刺さった巨岩のところで日の出の写真を撮りたかったのですが、もはやそんな時間はありません。

とにかく、急いで出発です。第2小屋前から梯子を登り、八合目に向かいます。

せめて八合目で日の出をと思っていましたが、テント場まで来たときに太陽が顔を出してしまいました。テント場には幕営跡が残されていて、この時期にテント泊装備で登ってくる人も案外いるようです。この長大で険しい黒戸尾根を冬のテント泊装備で登るなんて、自分としては挑戦したいとは思いませんが、20年前ならやってみるかもしれません。

テント場からのルートはかなりの急斜面で、それを直登するハードな区間でした。そのうえ、雪がサラサラでクランポンの爪もいまいち食いつきが悪く、朝から体力を消耗させられました。

急斜面を登り切り、少し傾斜が緩むと、目の前に甲斐駒ヶ岳が姿を現しました。これからあの上まで登るのかと思うと、気が引き締まります。
ここで一息。ぽちっと押したら、引き続きブログ「ヤマふぉと」をお楽しみ下さい。


7:15 八合目らしきところに着きました。八合目を示すようなものは何もありませんでしたが、鳥居の脚のような石柱と、石碑が立っているので、ここが八合目の御来迎場なのでしょう。

立ったまま少しの時間ドリンク休憩をとり、すぐに出発します。

しばらくなだらかな尾根を進んで行くと、目の前に巨岩が林立する小ピークが現れました。これを越えていくのかと思うとちょっとげんなりですが、幸いにもこのピークは右手から岩の下を巻いて行くことができました。

しかし、その先にちょっと面倒な箇所が待っていました。腰よりも高いぐらいの大きな岩を乗り越えていかないといけない場所です。鎖がかかっているのでまだましですが、足場となる岩は手前に傾いていて、しかも凍り付いた雪が貼りついているので、わりと厄介な段差でした。

7:40 その先は徐々に狭くなっていく尾根を辿り、とうとう核心部への取りつき箇所までやってきました。右上に剣が刺さった大岩が見えるので、この巨岩の間を縫うようにして急斜面を這い上がるんだろうなということはほぼ予測がつきます。ただし、ここからはトレースが見えないため、どういうルートなのか、どこを登るのかがわかりませんでした。ちなみに、中央に見える巨岩までは尾根を渡っていくのですが、巨岩の右側を巻いて登るトレースは見えているものの、その先はわからない状態です。右手の雪面にトレースは見えなかったので、おそらく左手の斜面を登るのだろうと想像していました。

巨岩の下を右下から巻いて登って行いきます。

その先で左下の斜面にトレースは続いていました。斜面に降りてみると、下は遥か彼方まで続く滑り台のような谷筋で、その絶壁のような谷筋を直登するというわけです。少し登ったところで一息つける場所があったので、遥か下まで続く斜面を写真に撮ってみましたが、改めてみてもけっこう恐ろしい場所です。落ちたらまず助からないこの急斜面をさらに上へと登ります。

7:59 ようやく核心部の雪壁を登り切り、安心できる場所まで来ました。急斜面に取りついてから15分程度しか経っていませんが、もっと長い時間をかけて登ってきたような気がします。

見上げれば、剣が刺さった巨岩がすぐ先にあります。さらにその先の遥かな高みに甲斐駒ヶ岳がそびえているのが見えます。

8:06 剣の刺さった巨岩の上まで登ってきました。ちょうど太陽が剣に重なるような場所にあり、これはこれでいいタイミングだったのかもしれません。

鳳凰三山と富士山を背景に入れたカットも撮っておきました。しかし、やはり日の出前の赤から濃紺へと移り変わるグラデーションの空をバックにした写真や、日の出直後の写真も撮りたいという気持ちもあり、雪がない時期にもう一度来てみようかという気になってきました。なぜ雪のない時期なのかというと、逆光の撮影になるため雪のあるなしは写真に写らないので、それなら気温の低い厳しい積雪期である必要はないからです。荷物も軽くて済むし、そのほうが撮影に専念できそうです。

剣の刺さった巨岩の所で10分ほど休憩してから出発しました。一段登るとちょっとした平地があり、その先は岩場の連なる稜線となりました。ここから先は比較的楽に行けそうです。

1か所だけ、段差のある岩場を通過するのにやや面倒な箇所がありましたが、それいがいは比較的楽に通過して、山頂の祠が見えるところまでやってきました。右奥の方にも祠のようなものがあるように見えるピークがあり、どっちが本当の山頂だろうと少し迷ったりもしましたが、以前登った時の記憶では、確か手前のピークに見える四角い祠が甲斐駒山頂の祠だったと思うので、さすがに手前のピークで間違いはないだろうと納得しました。ちなみに、右奥に見えるピークにあるのは、祠ではなく岩でした。今年に入ってから、山に登るときはコンタクトレンズをしないで裸眼のまま登っているので、遠くの方は良く見えないという問題があります。幸い、足元や近くであれば困らない程度に見えるので、裸眼でも問題はありません。ただし、暗くなると細かいところまではわからないので、その場合はメガネを使います。

左手には、あいかわらず鳳凰三山と富士山が重なって見えていましたが、とうとう富士山が頭一つ高く見えるようになりました。

駒ケ岳神社奥社のある山頂手前のピークまで来ると、山頂は目と鼻の先です。少し下で同宿の2人組とすれ違ったので、おそらく山頂は無人のはずです。

9:08 甲斐駒ヶ岳山頂に着きました。日本三大急登のひとつで、標高差2200mというダントツトップの標高差をもつ積雪期の黒戸尾根を無事に踏破することができました。もう1週間早ければ厳冬期での登頂でしたが、まあ実質的にはほぼ厳冬期といってもいいような気温ではあります。もっとも、山頂は日当たりが良く意外と風が弱かったので、途中の尾根筋と比べれば全然寒くありませんでした。
ちなみに、2014年9月に踏破した北アルプス三大急登のひとつに数えられる剱岳の早月尾根の標高差は2238mと、黒戸尾根を上回ります。単純な標高差でいえば、海抜0mの海辺からスタートし、標高2932mの白馬岳まで続く栂海新道が日本で一番かもしれませんが、急登という意味ではちょっと違うかなという感じです。栂海新道も一度は歩いてみたい道ではあります。

山頂からの展望をゆっくりと楽しみました。こちらは仙丈ケ岳です。仙丈ケ岳は厳冬期に登頂した唯一の3000m峰になります。

そして、南アルプスの3000m峰たちです。蝙蝠岳は2865mですが、こうしてみると居並ぶ3000mの峰々に負けない存在感があります。

登ってくるときにずっと左手に見えていた鳳凰三山と富士山です。薬師岳は観音岳の背後に隠れて見えません。

八ヶ岳を見下ろす高さにいるということを実感した瞬間でした。

遥か彼方に見える北アルプスの高峰群です。ひときわ高い奥穂高岳を中心に、名峰が連なります。

北アルプスの南端に、少し離れて乗鞍岳。

中央アルプスの奥には、御嶽山も見えていました。

そして、道端の木曽駒ケ岳から連なる中央アルプスの峰々です。これらの峰々を眺めながら、岩に座って行動食を食べながら、飽きることなく居並ぶ名峰群を眺めていました。

つづく。
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7日の朝は4時過ぎに起床しました。予定では5時に出発し、8時過ぎに登頂。七丈小屋には10時30分頃戻り、11時には出発して、16時30分頃下山完了となるはずでした。しかし、せっかく早く起きたのにもかかわらず、お湯を沸かしたり、朝食を食べたり、着替えて荷物をまとめたりしているうちにいつの間にか5時を過ぎてしまいました。それでも、15分程度の遅れなら問題ないと思っていたら、出発直前になって急にもよおしてしまい、トイレにいったりしているうちに、なんと6時を回ってしまいました。

ちなみに、朝食はカップ麺で簡単に済ませました。
6:11 いったいどうしてこんなに時間が経ってしまったのかと、意味もなく憤りながら第2小屋の前のベンチでクランポンを装着し、ようやく出発の準備が整いました。

鳳凰三山の向こうの空が赤く染まり、日の出が近づいています。まだ暗いうちに歩きはじめるつもりでヘッドライトをヘルメットに装着しておいたというのに、すでに明るくなってヘッドライトは必要なくなっていました。できれば剣が刺さった巨岩のところで日の出の写真を撮りたかったのですが、もはやそんな時間はありません。

とにかく、急いで出発です。第2小屋前から梯子を登り、八合目に向かいます。

せめて八合目で日の出をと思っていましたが、テント場まで来たときに太陽が顔を出してしまいました。テント場には幕営跡が残されていて、この時期にテント泊装備で登ってくる人も案外いるようです。この長大で険しい黒戸尾根を冬のテント泊装備で登るなんて、自分としては挑戦したいとは思いませんが、20年前ならやってみるかもしれません。

テント場からのルートはかなりの急斜面で、それを直登するハードな区間でした。そのうえ、雪がサラサラでクランポンの爪もいまいち食いつきが悪く、朝から体力を消耗させられました。

急斜面を登り切り、少し傾斜が緩むと、目の前に甲斐駒ヶ岳が姿を現しました。これからあの上まで登るのかと思うと、気が引き締まります。
ここで一息。ぽちっと押したら、引き続きブログ「ヤマふぉと」をお楽しみ下さい。


7:15 八合目らしきところに着きました。八合目を示すようなものは何もありませんでしたが、鳥居の脚のような石柱と、石碑が立っているので、ここが八合目の御来迎場なのでしょう。

立ったまま少しの時間ドリンク休憩をとり、すぐに出発します。

しばらくなだらかな尾根を進んで行くと、目の前に巨岩が林立する小ピークが現れました。これを越えていくのかと思うとちょっとげんなりですが、幸いにもこのピークは右手から岩の下を巻いて行くことができました。

しかし、その先にちょっと面倒な箇所が待っていました。腰よりも高いぐらいの大きな岩を乗り越えていかないといけない場所です。鎖がかかっているのでまだましですが、足場となる岩は手前に傾いていて、しかも凍り付いた雪が貼りついているので、わりと厄介な段差でした。

7:40 その先は徐々に狭くなっていく尾根を辿り、とうとう核心部への取りつき箇所までやってきました。右上に剣が刺さった大岩が見えるので、この巨岩の間を縫うようにして急斜面を這い上がるんだろうなということはほぼ予測がつきます。ただし、ここからはトレースが見えないため、どういうルートなのか、どこを登るのかがわかりませんでした。ちなみに、中央に見える巨岩までは尾根を渡っていくのですが、巨岩の右側を巻いて登るトレースは見えているものの、その先はわからない状態です。右手の雪面にトレースは見えなかったので、おそらく左手の斜面を登るのだろうと想像していました。

巨岩の下を右下から巻いて登って行いきます。

その先で左下の斜面にトレースは続いていました。斜面に降りてみると、下は遥か彼方まで続く滑り台のような谷筋で、その絶壁のような谷筋を直登するというわけです。少し登ったところで一息つける場所があったので、遥か下まで続く斜面を写真に撮ってみましたが、改めてみてもけっこう恐ろしい場所です。落ちたらまず助からないこの急斜面をさらに上へと登ります。

7:59 ようやく核心部の雪壁を登り切り、安心できる場所まで来ました。急斜面に取りついてから15分程度しか経っていませんが、もっと長い時間をかけて登ってきたような気がします。

見上げれば、剣が刺さった巨岩がすぐ先にあります。さらにその先の遥かな高みに甲斐駒ヶ岳がそびえているのが見えます。

8:06 剣の刺さった巨岩の上まで登ってきました。ちょうど太陽が剣に重なるような場所にあり、これはこれでいいタイミングだったのかもしれません。

鳳凰三山と富士山を背景に入れたカットも撮っておきました。しかし、やはり日の出前の赤から濃紺へと移り変わるグラデーションの空をバックにした写真や、日の出直後の写真も撮りたいという気持ちもあり、雪がない時期にもう一度来てみようかという気になってきました。なぜ雪のない時期なのかというと、逆光の撮影になるため雪のあるなしは写真に写らないので、それなら気温の低い厳しい積雪期である必要はないからです。荷物も軽くて済むし、そのほうが撮影に専念できそうです。

剣の刺さった巨岩の所で10分ほど休憩してから出発しました。一段登るとちょっとした平地があり、その先は岩場の連なる稜線となりました。ここから先は比較的楽に行けそうです。

1か所だけ、段差のある岩場を通過するのにやや面倒な箇所がありましたが、それいがいは比較的楽に通過して、山頂の祠が見えるところまでやってきました。右奥の方にも祠のようなものがあるように見えるピークがあり、どっちが本当の山頂だろうと少し迷ったりもしましたが、以前登った時の記憶では、確か手前のピークに見える四角い祠が甲斐駒山頂の祠だったと思うので、さすがに手前のピークで間違いはないだろうと納得しました。ちなみに、右奥に見えるピークにあるのは、祠ではなく岩でした。今年に入ってから、山に登るときはコンタクトレンズをしないで裸眼のまま登っているので、遠くの方は良く見えないという問題があります。幸い、足元や近くであれば困らない程度に見えるので、裸眼でも問題はありません。ただし、暗くなると細かいところまではわからないので、その場合はメガネを使います。

左手には、あいかわらず鳳凰三山と富士山が重なって見えていましたが、とうとう富士山が頭一つ高く見えるようになりました。

駒ケ岳神社奥社のある山頂手前のピークまで来ると、山頂は目と鼻の先です。少し下で同宿の2人組とすれ違ったので、おそらく山頂は無人のはずです。

9:08 甲斐駒ヶ岳山頂に着きました。日本三大急登のひとつで、標高差2200mというダントツトップの標高差をもつ積雪期の黒戸尾根を無事に踏破することができました。もう1週間早ければ厳冬期での登頂でしたが、まあ実質的にはほぼ厳冬期といってもいいような気温ではあります。もっとも、山頂は日当たりが良く意外と風が弱かったので、途中の尾根筋と比べれば全然寒くありませんでした。
ちなみに、2014年9月に踏破した北アルプス三大急登のひとつに数えられる剱岳の早月尾根の標高差は2238mと、黒戸尾根を上回ります。単純な標高差でいえば、海抜0mの海辺からスタートし、標高2932mの白馬岳まで続く栂海新道が日本で一番かもしれませんが、急登という意味ではちょっと違うかなという感じです。栂海新道も一度は歩いてみたい道ではあります。

山頂からの展望をゆっくりと楽しみました。こちらは仙丈ケ岳です。仙丈ケ岳は厳冬期に登頂した唯一の3000m峰になります。

そして、南アルプスの3000m峰たちです。蝙蝠岳は2865mですが、こうしてみると居並ぶ3000mの峰々に負けない存在感があります。

登ってくるときにずっと左手に見えていた鳳凰三山と富士山です。薬師岳は観音岳の背後に隠れて見えません。

八ヶ岳を見下ろす高さにいるということを実感した瞬間でした。

遥か彼方に見える北アルプスの高峰群です。ひときわ高い奥穂高岳を中心に、名峰が連なります。

北アルプスの南端に、少し離れて乗鞍岳。

中央アルプスの奥には、御嶽山も見えていました。

そして、道端の木曽駒ケ岳から連なる中央アルプスの峰々です。これらの峰々を眺めながら、岩に座って行動食を食べながら、飽きることなく居並ぶ名峰群を眺めていました。

つづく。
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